多摩川水干の流れを

tenkara1nen

2016年04月26日 23:45

 4月24日 一之瀬川最上流を作場平に向かって釣り上った。 白い岩魚と山女に出合えた。
 ゴールデンウィークは九州へ戻ることにした。 釣りの計画も、小菅村の祭りも諦めるしかないかもしれない。 車で4月29日に東京を立って、できれば5月3日には戻ってきたいのだが、さてどうなることか。

 今日は素晴らしく早く起きた。 時間は4時、まだ外は暗い。 今日は雨かもしれない、と云っても釣りに行くのである。 「降らないかもしれない」という天気予報を、今日に限っては信じるのだ。 場所は・・・ 年間パスポートを持っている川、FITのタイヤに気を使い舗装道路で行けるところ、竿を振るまでに歩かなくてもよいところ、上流に人の住む家がないところ、当然岩魚が沢山いるところ、なおかつ私の毛鉤を好むものが多いこと、そして遡行が楽なことと戻りが楽なこと、流れが清らかで景色が良いこと、もう少し希望を述べるのなら生き物に沢山出合えること、今年はまだ行っていないところが良い、このくらいのわずかな希望の場所である。

 もう頭を検索することはできず、選んだ場所はいつもの一之瀬川である。 ということで、車は最初から丹波山村に向かっている。 雨は家を出たときから止まない。 霧雨なので、じき止むはずなのだが、今はワイパーを時々は動かさないと前が見にくい。 雨は止むはずと呪文のように繰り返し、一之瀬の林道へ入っていく。 道は細く、尖った石が落ちているものの道は新しいので、ちょっと注意すれば気持ちの良い道である。 車は一台もないので、これも気持ちよい。

 雨の中を一之瀬集落に到着して、何度も釣りを開始したことのある二之瀬を通過する。 私が一番怖いのが、ここから200~300m位の道で、そこは一度崩落していて、今でもむき出しの斜面が見えてしまい、もし落ちたら、もし崩れたら、と思ってしまうのである。 そんな場所は、怖々と急いで通過してしまうのである。 ぶるっと身震いして、一之瀬の最終地点に到着する。 人が住まない路は舗装とは言えない舗装道路であった。

 早めに到着と思いきや7時を回っており、天が曇っている分早い時間と思わせるだけで、釣りとしてはやっぱり遅い。 今日は朝食も取っていないので、コンビニで買ってきた珈琲とパンでひと時の朝食タイムだ。 ホオジロが挨拶に来て、「この流れは釣れないよ」、というように、傍の木で「チッチッ、チッチッ」と訴える。 ように感じた。 不吉な予感であるが、私はこんな時間が好きである。 雨は止んでいる。

 十分にゆっくりとした後に、徐に準備をする。 曇っており、標高が高いためか、薄いシャツ1枚の私は寒くてしょうがない。 上着は油断して持ってきていないので、合羽をウインドブレーカ代わりに着ていくことにする。 失敗した~ しかし、合羽を着るよりも早くテンカラ竿を振り始める。 車を停めた場所のすぐ傍が流れなのである。 まずは車から10歩進んで一振り。 出た~ ・・・ 外れた~ これは幸先よしと考えるべきか。 二度と出なかったのだが。

 芳しくない釣り上りであるが、チャプチャプ小さいものが毛鉤と遊ぶ。 少し大きめのものは底に沈んでいるようで、毛鉤に向かって浮いてはこない。 大きな毛鉤遊ばれながら流れを遡って行くと、やっと手応えのあるものが現われた。 浅い流れではあるが巻き返しに岩がある場所に目を付けて、毛鉤を流し込むと、頭が現われて毛鉤を咥えた。 素晴らしい引きを堪能しながら引き上げると、23cmの岩魚であった。 一之瀬の流れにいる白い岩魚である。 ただ、いつか教えてもらったように尾びれが切られた岩魚であった。

 同じような場所に毛鉤を落とし、あるいは巻き込ませていると、岩魚と思われる当たりに出合う。 そんなことが二度あったが、どちらも合わせのタイミングが合わずに、手応えだけが残ることとなり、悔しさも一緒に残る。 それにしても倒木が多く、倒木のない流れは砂底であり、私のテンカラが威力発揮する場所が少ない。 まぁ腕が伴わないと、「手応えだけが残る」、ということになるのである。 昨年とは流れの雰囲気が違うような気もするのだが、記憶違いか。

 二本目の橋の手前で、流れは急激に曲がる。 そのまた手前に浅い砂底の淵があり、とっても渓流魚が好きそうである。 取り合えずその澄み切った流れに毛鉤を流すと、白泡から影が現われて、素晴らしい速さで毛鉤を咥えた。 ビックリしながらも竿を立て、いつものように慌てて網を出して、一旦下流に走られながらも収容した。 これもいい大きさの22cm岩魚で肌は白いが、先ほどと違って尾びれがピンとしていた。 一之瀬の岩魚は、こうでなくてはいけない。

 二つ目の橋を越えると山女が出てきた。 ただし、あまりに小さかったせいか、私が竿を立てる(煽る)と、後ろへ飛んで行き水に戻った。 まぁまぁ、小さな山女だった・・・と思うので・・・さしたる気持ちもなく・・・どうっていうことないので・・・悔しい。 でもそのすぐ後に、また岩魚が出てきた。 私としては山女を狙うつもりで、流れに毛鉤を二度三度と振り込んで、山女を誘ったつもりであったが、いざ毛鉤を咥えに来たのは18cmの岩魚である。 この場所は山女の場所だと思ったのであるが、修行不足である。

 三つ目の橋を越えると、山女の反応が良くなった。 だけどしっかり毛鉤を咥えてくれない。 一旦咥えても外れてしまい、山女はもんどりうって、水中を回転し続ける。 こんなことが続けて二回もあると、どうしても毛鉤か腕かのどちらかを疑うしかない。 毛鉤を確認するも大きさ以外に問題はない。 とすると腕か? 1m位の落ち込みを越えたときに、やっと13cmの山女を網に入れることができた。 となると、やっぱり腕かと納得する。

 滑滝までやってきて、右岸、左岸と流れのぶつかりに毛鉤を流したが、反応はなかった。 景色が良くて、ここで岩魚が出れば記念写真もよくなるはずなのだが、そううまくいかないのである。 この淵の最後に、落ち込み際の巻き込みに毛鉤を落として潜らせると、強い引きが伝わった。 こんな場面で二度も逃がしているので、今回はと力強く引き上げると、本当に水から出してしまい、なんとそのまま外れてしまったのである。 何度でも同じ失敗をして、反省を繰り返し、次はやらないぞと心に刻んでも、刻み方が足りないのである。

 ちょこっと分厚い流れがあり、雰囲気が良くなったので、予感があった。 強い流れの脇の少し弱い流れに毛鉤を落とし、ラインを張りながら流すと、山女がうまく咥えてくれた。 これが一番いい場面であり、山女は下ってきて、水面近くの毛鉤にうまく飛びつき、反転して白泡に消えようとしていたところに、私が反応できたのである。 偶然か、これも腕か。 どっちでもいいが、とても気持ち良いのは確かである。

 作場平が近づき、駐車場の車が見えたころ、やっと山女らしい山女が出てきてくれた。 それは出合いの下の流れから出たもので、相変わらず底まで見える綺麗な流れに毛鉤を流したときに、その毛鉤を追って水面を割ったのである。 そして、本日最大サイズの24cmの山女と判明したのである。 十分に写真を写して、止めようかと思いながら竿を振り、退渓地点までに小さな山女を二匹追加して、もう腹いっぱいである。



 笠取山の登山道入り口に上がり、本当に終了である。 これで、当分釣りはできない、とため息をつきながら車まで戻る。


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