4月2日 雨が降っていても岩魚、山女とあまごが出て、調子の良かった泉水谷の釣りである。
朝から雨が降っている。 昨日の酒がまだ残っているせいもあり、なかなか腰が重い。 やっと家を出たのは6時半近くなってからである。 雨は止まず、細かな水滴がフロントウィンドウを濡らす。 霧雨のような雨ではあるが、路面を濡らしていることで、後山川は諦める。 林道の状況もあわせて知りたかったが次回とし、丹波山村を抜けていく。 車の通りは少ない。
泉水の林道ゲートも、二週間前と同じように車がいないかもしれないと期待していたが、甘い考えであった。 先行する3台の車があったが、今日は雨であり、あまり遠くへは釣り上がっていないだろうと踏んで、少々歩くことにする。 気温5℃、風はあまりなく、霧雨のような雨が降り続く。
巡視路へ入るのを二本やり過ごし、滝がいくつか見えてくる頃、突然前方に自転車が二台見えた。 ここからは谷が浅くなり、入渓は楽になるのだ。 すなわち、釣り人二人が釣り上がっている。 いつもなら、目的の流れに行く前に我慢できなくなるのであるが、二台の自転車のおかげで、結局3.5KPまで歩くことになった。 これがよかった?
この辺りは以前、熊に出合った地点なので、入渓前に辺りを丹念に見回し、耳を立てて異常がないことを確認する。 下りたところには一部深い淵があり、そのゆっくり流れる流心に毛鉤を落とすと、山女が勢い良く追ってきて咥えた。 大きさは、16cmで小さい山女であったが、なんにせよ最初の獲物は嬉しいものである。 これで安心して竿を振り回せる。
瀞場の水面に毛鉤を落とし、様子を見るも反応がないので、次に落としたときには「チョン」と誘ってみた。 すると底から渓流魚が現われて、毛鉤をぱっくりと咥えた。 水が少なくなった透明度の高い静かな水面は、毛鉤を咥えるまでの動きが見えて、とても興奮し、感動的でさえある。 18cmの色の良い岩魚であった。
しばらく反応はない。 そして、遡行が難しい流れに差し掛かり、いったん林道に上がる。 その難しい流れを林道から見ると、黒い影がある。 少し無理すればよかったか、と反省しながら、少し歩く。 そして、またもや流れに魚影が見えた。 今度は斜面を下りて、下流から攻めたが反応はなかった。 また、林道へ上がり歩く。
大黒茂が近くなったところで、再び流れに下りる。 下りたところの淵には山女がいる。 しかし、ここでいい思いをしたことはなかった。 淵の出口には大きな岩があり、その横を流すように毛鉤を振り込んだ。 すると、毛鉤が落ちた途端に毛鉤が消えた。 すぐさま竿を立てると、心地よい引きが伝わり、19cmの山女が毛鉤を咥えていた。 気分が良い。
岩陰に潜み淵を見ると、右岸側の大岩の横に山女が見えていた。 次はあいつを狙おうと、ゆっくり流れる右岸側に毛鉤を落として、流れに従わせる。 どうだ、どうだ、どうだ~ 動いた~ 咥えた! 素早く反応し?、竿を立てると、先ほどより手応えがある。 今度は20cmの山女であった。 体高のあるいい山女であった。
まだいるのは時々見える陰でわかっていたが、何度竿を振り回しても、毛鉤に近づくだけで咥えない。 諦めざるを得ないので、気分を変えて左岸側の強い流れに毛鉤を落とした。 極端にラインごと引き込む辺りで、慌てて竿を立てると、今までにない引きが伝わる。 これは大きい! 網はどこだ! あぁ~さっきの山女がまだ網の中だ。 その慌てぶりは、見物客がいれば手をたたいていただろう。
なんと24cmの山女であった。 いやいや、なんと鼻が曲がり始めているではないか。 しかも色つやが良い。 なんだか非常に久しぶりに思える山女で、長い時間見惚れて、相当な枚数の写真を撮って、そしてまた眺めた。 分かれるのも惜しく、持ち帰ろうかとも思ったが、やっぱり遡行していくのに邪魔なので放した。 それにしてもいい山女であった。
大黒茂の出合いには大きめの淵がいくつか続く。 この場所はとても景色が良く、いつも同じような場所で写真を撮ってしまう。 その景色の良い場所で、左岸側に巻いている流れが、岩の脇を通るところに毛鉤をお見舞いする。 岩の脇を流れている毛鉤が流れなくなったので、引っかかったのかと、軽く煽ってみると、「ビクビクッ」、と竿が震えた。 と同時に黒い影が勢いよく淵の中に消えていった。 きっと大きな岩魚がった・・・はずで・・・ 残念!
気を落としながらも今度は右岸側のほとんど流れのない場所を狙う。 毛鉤の見える場所では現われないので、毛鉤が見えない大岩の向こう側に落とすと、ラインの動きがおかしい。 ちょっとだけ竿を立てると、逆に引き込まれたので、本気で竿を立てる。 またしても強い引きで、引っ張り上げようとしてもなかなかうまくいかず、網を出すと、上空の木にラインが絡む。
やっと取り込んだのは、23cmの山女、いやアマゴであった。 最初は山女と思って写真を撮っていたが、よく見ると橙色の斑点が黒っぽい体に見えていた。 アマゴの黒いものは、あまり見たことがなかったせいもあり、山女と思ったのである。 それにしても黒い体で、離れ難い。 世は満足じゃ! もう十分釣った感があり、後は景色を見ながら散歩である。
大黒茂の巡視路を通過して、釣り上る。 雨はほとんど止んでいるので、初めから着ている合羽が邪魔である。 脱いでも仕舞うのが面倒なのだ。 橋から、そう遠くないところまで釣り上り、19cmの山女を最後に、もう疲れたと林道に上がる。
合羽とチョッキを脱いで、水を飲み、一服する。 そういえば記念写真を撮っていないのに気付き、林道の倒木で記念写真とした。 シャッターを押して勢いよく倒木まで行って、格好つけた途端に、上から4人の釣り人が下りてきた。 非常にばつが悪いので、写真の整理をするかのようにカメラをいじくっていた。 彼らは近づくと、「釣れましたか?」、と聞くので自慢話?をお見舞いした。
雨であったが、非常に気分のいい釣りとなった。 最近になく幸せな心で車まで戻れた。 明日もこうであればと、心は明日へ飛ぶ。
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